モリヤ書房

大学卒業後、一度も就職することなくフリーランスになったWebマーケッターである私が日々学んだこと、考えたこと、伝えたいことをシェアします。書籍紹介記事多め。

【書評】私たちは子どもに何ができるのか 非認知能力を育み、格差に挑む

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メンタリストDaiGoさんのYouTubeの中で紹介されていた「私たちは子どもに何ができるのか」を読んでみたので書評を書きたいと思います。

読みものとして、とても興味深い内容だなとは感じました。

主に世界の貧困層の子供と富裕層の子供の教育格差を無くすには?

というテーマのもとで、子供の教育に本当に必要なのはどんなことかを科学的根拠(エビデンス)に基づいて考察していきます。

これは先生など子供の教育に関わるお仕事をしている人。

また、子供の教育に関わる行政の関係者や政治家の人などには、ぜひ読んでほしい1冊だなと感じました。

具体的な子育てノウハウというよりも、広い視野に立った教育論ですね。

正直、「こうすればいい」という具体的な指針にはやや欠けていると感じました。

その中でも、ここは抑えておいたほうが良さそうだというポイントをいくつか挙げてみます。

非認知能力って何?

まず、本書のタイトルにある「非認知能力」とは何なのかを知っておかないと話を理解できません。

非認知能力というのは、「粘り強さ」「誠実さ」「自制心」「楽観主義」など、困難を乗り越えて成功するために役割を果たす【性格の強み】とも呼ばれる気質であると定義しています。

これらの気質は環境を整えることで伸ばすことができるというのです。

人の気質は遺伝的なものによっても決まりますが、その多くは環境によるということなんです。

貧困な家庭と裕福な家庭で学力が違うのも、環境が違うから結果として非認知能力に違いが出て、学力に反映されていくと考えられるのです。

動機づけの方法

必ずしもやりたくないけど、やらなければいけないことにどう取り組むか?

これは、子供に限らず大人であっても、成功する人としない人の態度の違いとして大きな要素のように思えます。

「好きなことを仕事に」といいますが、どんなに好きな仕事であっても、進めていく中でやらなければいけない、苦手な作業だって必ず出てきます。

そこで大切になってくるのが「自律性」「有能感」「関係性」の3つ。

それぞれ、以下のような状況において、伸ばしていけるようになります。

「自律性」→自分で選んで、自分の意志でやっているのだという実感を最大限に持たせる。管理、強制されていると感じさせないとき

「有能感」→やり遂げることはできるが簡単すぎるわけではないタスク、現在の能力をほんの少し超える課題を与えられたとき

「関係性」→好感を持たれ、価値を認められ、尊重されていると感じるとき

この3つのキーワードと、それぞれを伸ばしていく考え方は、子供の教育において意識していくと良さそうです。

失敗を乗り越えるための信念

動機づけをもっと掘り下げていくと、「失敗を乗り越える」ためのマインドセットが確立しているかどうかが大切になってきます。

どういう考え方を持っていると、失敗を乗り越えることができるのか?

それは、以下の4つになります。

①私はこの学校に所属している

②私の能力は努力によって伸びる

③私はこれを成功させることができる

④この勉強は私にとって価値がある

そう思えるような声がけと介入をしていくこと。

それが、非認知能力を高める環境であるということになるのです。

これも、子供に限らず大人も同じだよなと感じることではありますね。

では、それぞれの信念をどうやって伸ばしていくか?

それは本書からは私は読み取ることができませんでした。

いわゆる進学校の場合、この4つの信念が平均的に高い集団になっていると言えそうです。

だからこそ、子供に良い影響を与える環境を選んであげることが大切。

一方で、家庭でも、この4つの信念を強化するような声がけがどんなものかを考えて話しかけていくと良さそうですね。

まとめ

私たちが子供に何ができるのか?

それは、「粘り強さ」「誠実さ」「自制心」「楽観主義」などの非認知能力を高められるような環境を作ってあげること。

失敗を乗り越えることができるマインドセットが持てるように、声をかけて自信が持てるような子供にしていくことが大切なのです。

さまざまな事例やエビデンスが満載で、確実性の高い子供の教育に関する情報がまとめられた1冊になっています。

本書の内容を国や地域における教育に盛り込んでいけば、国や地域の教育レベルが向上することになるでしょう。

一方で、個人レベルで見たら、子供の環境を整備することがどれだけ大切かということがわかります。

具体的な行動に落とし込んでいくためには、さらに掘り下げて考えていく必要はありますが、エビデンスに基づいた正確な情報という意味で、とても信頼性のある本だと言えます。

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